2018年05月18日(金)08時44分22秒
児童相談所の仕事に関わらせていただいて、かれこれ30年ほどになります。その中で感じることは、全国の児童相談所の研修や、学校の先生が学ぶ教室運営のカリキュラムの中に体癖論を取り入れることができたら……ということです。
僕は、病院勤めをしていた10数年は週1回、その後も月に1回は児童相談所に伺っていますが、その間、体癖論を使わない日のほうが少ないぐらい、いつも体癖論のお世話になっています。今は、子どもたちや、子どもたちの親と関わる職員の方々の相談を受け、スーパーバイズする役割ですが、その際、体癖論を取り入れることで、解決する問題は非常に多いのです。
相手が3種なのか、8種なのか、あるいは5種なのか10種なのか。今の僕の立場はスーパーバイザーで、お子さんに直接会うわけではありません。ですから、必ずしも正確な診断とは言えませんが、それでも、スタッフから伺った情報をもとにある程度体癖のあたりをつけ、その気質に合わせた対応をアドバイスする。もちろん、スタッフは体癖論を知りませんから「何種だから」という言い方はしませんが、アドバイスさせていただいた内容について怪訝な顔をされることはありません。
たとえば、お預かりしているお子さんとの関わり方についてご説明するとき、お母さんが4種なのか、5種なのかによって、求められるプレゼンはほとんど「真逆」と言っていいぐらい違います。もし、5種の人にだらだらと「そもそも、子育てというのはですね……」などという説明を始めてしまったら、肝心な部分の説明に入る15分前には、相手は聞かなくなってしまうでしょう。もしかしたら、「ああ、この職員は能力がないから、説明が下手なんだ」と信頼を失ってしまう可能性すら、ありえます。
一方、4種のお母さんであれば、できるだけゆっくりと、反応を確かめながら一つ一つポイントを押さえてお話をさせていただく必要があるでしょう。それくらい、タイプによって必要とされる対応は違う。
体癖論を知らなければ、こうした、タイプ別の対応がなされることはありません。私たちは無意識のうちに「自分と相手は同じ感受性」だという思い込みから、コミュニケーションを取ろうとします。そうすると「これで分かっていただけた」と思ったとしても、その3分の1も相手には伝わっていない、ということが起きてしまうのです。
一対一のコミュニケーションはもちろんのこと、教室運営やグループワークなど、集団でのコミュニケーションでは、さらに体癖論は効果的です。
ただ、世の中のほとんどの人は、こういった性格分類、体質分析については「いかがわしいものだ」と思い込んでいる。表面的には否定していなくても、潜在意識の中でそう思い込んでいる人が多い。だから、本当に真剣に取り入れようとする人は少ないんです。
もちろん、気に入らなければ、取り入れなくてもいいと思います。ただ、体癖論を取り入れない、ということは、裏を返せば「今の自分の対人コミュニケーション技法を変えない」ということと、ほとんど同じなのだと僕は思います。
現場で接する相手は、多種多様です。それに対して、自分の持って生まれたコミュニケーション能力と一般的な対人スキルだけで個別対応するのは、実はとても、非効率的なのです。体癖論を学んだ方が、ずっと効率的で楽に、さらには正確な対応になるのです。
でも人は、自分が慣れ親しんだコミュニケーション方法を変えることに、抵抗します。(僕自身がそうでしたから、その気持はよくわかります)
「学び」というのは、本質的に楽しいものです。ただ人は誰でも、自分の認識を根底から変えるような学びに対して、保守的です。変えたくない、変わりたくないのです。でも実は、世の中で一番楽しいことは、まさにそうした自分の認識が根底から変わるような「学び」なんです。
手芸でも、絵を描くことでも、詩を書くことでも、お茶やお花、そういう習い事でも、学んで上達することが楽しいわけですよね。すべての遊びには、学びの要素があるから楽しい。遊びの中に学びの要素があり、学んでいる瞬間にこそ、最高に楽しい遊びが生まれる。遊びのすべては、学びにつながっている。遊ぶように学ぶことができれば、人生の喜びは3倍、4倍になっていくでしょう。
学ぶことを億劫がっている人は、子どもの頃に親や当時の教育によって、それがしんどいこと、面倒くさいこと、いやなこと、自分には関係ないことだと刷り込まれているのではないかと思います。そういう意味では、体癖論を学ぶ前に、そこを解放する必要があるのかもしれません。そうすると学ぶ楽しさは3倍増になるし、あらゆることが非常に効率的になる。失敗しなくなる、とまでは言いませんが、失敗しにくくなるのは確かです。
そういう学びの楽しさが詰まっているのが体癖論なのだと僕は思っています。
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