日記(ブログ)


精神科医の備忘録~key of Life。臨床、講演、テレビ、ラジオ……精神科医の東奔西走の日々。

【メルマガ】トラウマもまた、私たちの心の現実である

2016年01月19日(火)03時12分11秒

 

人間の意識の可能性は無限といっていいぐらい広大です。だからこそ、意識は近視眼的にならず、できるだけ遠くへと、しかも妄想に陥らずに広げ続けることができるかが問題となるのです。

 

私たちは拳を握ることもできれば、それを緩めることもできます。しかし、私たちはしばしば、トラウマ故に、握った拳を開くことができなくなってしまいます。このとき重要なのは、トラウマもまた現実の一部であるということを認めるということ。そこからしか、トラウマからの回復はおぼつきません。

 

なぜなら、トラウマというのは常に、短絡的な感情反応を助長し、冷静な思考を阻害し続けるものだからです。逆に言えば、多くの人は主観的には「考えている」つもりであっても、「感情的になっている」だけであることが少なくない。その厳粛なる事実に、瞬間ごとに気づき続けることができるかどうか。問題はそこなのです。

 

多くの人が感情的であることは、感情的になっていい理由にはなりません。もちろん、感情的になっていいと考える人に、無理強いはいたしません。しかし、マジョリティが正しいわけではない、ということは繰り返し、言っておく必要があります。感情の坩堝の只中にありながらも微笑し、「個」として明日を目指し続けることこそが、私たちに課せられたテーマである。僕はそう考えているのです。

 

 

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年1月18日 Vol.116

<トラウマもまた、私たちの心の現実である/容姿の劣等感との付き合い方/瞑想を日常化するコツ/話していて飽きがこない人/整理する脳、カオスを呼び込む身体>

 

目次

00【イントロダクション】トラウマもまた、私たちの心の現実である

01カウンセリングルーム Pick Up!

[Q1] 容姿の劣等感との付き合い方

02【コラム】瞑想を日常化するコツ

03精神科医の備忘録 Key of Life

・話していて飽きがこない人

04読むこころカフェ(39)

・整理する脳、カオスを呼び込む身体

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【メルマガ・年頭のご挨拶】本当の知恵は「タイミングが合う」ことから

2016年01月04日(月)01時00分55秒

 

皆さん、あけまして

おめでとうございます!

 

皆様にとって

素晴らしい一年になりますよう

お祈り申し上げます。

 

2

 

名越式性格分類ゼミ(通信講座版)のノベルティノート。

 

 

 

さて先日、ツイッターに、「知恵とはタイミングが合いはじめるということ」と書きました。

 

近年、あらゆることが機械やコンピューターによって代替されるようになっていくようになる中で、人間が担うべき役割は何か、ということが非常に重要なテーマとなりつつあると僕は考えています。それは言い換えれば機械では担えない、人間だけの「知恵」とは何か、という問いとどう向き合っていくか、ということです。

 

例えば「認識」というものの多くは既に、コンピューターによってデータ化され、整理・体系化されるようになっているようです。空間認識とか、質感の認識とか、少し前だとデータ化するには途方もない手間がかかっていたアナログな認識が、最近では当たり前のように、コンピューターが取り扱うようになっている。その結果として、以前であれば人間にしかできなかったような分野が、どんどん機械に取って代わられるようになっています。

 

では、機械ではなく、人間にしか担えない「知恵」とは何なのか。「タイミングが合う」というのは、この問題を考える上で、重要な切り口となると僕は考えています。というのも「タイミングが合う」ということは、いまのところ科学的に取り扱うことができないものだからです。

 

私たちの日常感覚においては間違いなく、「タイミングが合う」という現象は起きています。しかし、どれほど精密なコンピューターであっても、「タイミングが合う」という現象を再現することは、非常に難しい。

 

もちろん、単に「時間と空間がピッタリと一致する」ということであれば、コンピューターのデータ処理でも、実現することはできるでしょう。しかし、私たちが認識している「タイミングが合う」ということは、必ずしも「時間と空間がピッタリと一致する」ことだけではありません。例えば「時間と空間が絶妙にズレる」ことを「タイミングが合う」と表現することだってあるのです。

 

僕はこの「タイミングが合う」ということに、知恵の本質を感じます。カウンセリングでいえば、何気ないこちらの一言で、相手が何か、人生の重大な気づきを得ることがある。それは、その「一言」の意味内容が素晴らしいからではありません。一回限りの時間、空間のズレ。声色や表情、流れといったものすべてによってもたらされる劇的な変化というものがある。これを私たちは「知恵」と呼ぶのだと思うのです。

 

逆に言えば、「タイミングが合う」という要素を持たない知恵というのは、本当の知恵ではない、といってもいいと僕は考えています。タイミングは決して科学することができない。科学の対象でないということは、再現できないし、検証できない、ということです。もちろん、後から理由付けすることはできるけれど、それは文字通りの「後知恵」でしかない。知恵を科学的に制御したり、科学的に知恵を引き出す、ということはできないのです。

 

瞑想や行を重ねていると、だんだんと「タイミングが合う」ということが起きやすくなってきます。これは、知恵の発露において、一番わかりやすいものの一つです。もちろんこれを意識的にコントロールするというのはなかなか難しいのですが、段々と「ああ、これが『知恵』なのかもしれない」という実感が湧いてくるのです。

 

皆さんもぜひ、身の回りで起きることを「タイミングが合っているかどうか」という視点で見直してみてください。そこにこそ、大いなる知恵のヒントが転がっているように思います。

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年1月4日 Vol.115

<本当の知恵は「タイミングが合う」ことから/「夢の心理学」についての名越先生の見解を聞かせてください/グループ型アイドルという「型」の力/USJの「Re-born(リ・ボーン)」に込めた思い/なぜ今、性格分類なのか/緊張の奥底に眠る「身体的記憶」ほか>

目次

00【イントロダクション】本当の知恵は「タイミングが合う」ことから

01【カウンセリングルーム】Pick Up!

[Q1] 「夢の心理学」についての名越先生の見解を聞かせてください

02【近況】twitterのアンケート機能を使ってみた/グループ型アイドルという「型」の力/USJの「Re-born(リ・ボーン)」に込めた思い

03【コラム】なぜ今、性格分類なのか

04精神科医の備忘録 Key of Life

・悪のごとき善であれ

05読むこころカフェ(38)

・緊張の奥底に眠る「身体的記憶」

06講座情報・メディア出演予定

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【メルマガ】言葉が持つ2つの意味に目を向ける

2015年12月26日(土)12時28分56秒

 

多くの言葉は、常に2つの意味をはらんでいます。

 

例えば「喜びのために生きる」といっても、「人が喜ぶことをする」のと「人の喜ぶことをする自分を求める」のとでは、まったく違います。あるいは「ピュア」ということにも2種類があるといえるでしょう。強すぎる妄想のためにピュアに見える人と、感覚が尖すぎるためにピュアになっている人は、まったく別種の人間なのです。

 

あるいは「興味」にも2種類があるように思います。満たされれば冷める興味と、汲めども尽きぬ興味です。そして、後者の興味の中でのみ、時折、時間を超越するような感覚が起きるのです。

 

汲めども尽きぬ興味は、それが有り得ると可能性を信じられた日から、その到来の扉が開かれるのです。

<名越康文メールマガジン2016年12月21日号「精神科医の備忘録 Key of Life」より。

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年12月21日 Vol.114

<ちょっと変わったクリスマスの過ごし方/なぜ空海は真言宗と名付けたのか/才能とは、強靭で極めて薄い膜のようなものだ/「つられ笑い」は心身の健やかさの指標!?/何はなくとも、まずは身体を動かすことからほか>

目次

00【イントロダクション】ちょっと変わったクリスマスの過ごし方

01【近況】なぜ空海は真言宗と名付けたのか 改めて「声」の力について考える

02精神科医の備忘録 Key of Life

・才能とは、強靭で極めて薄い膜のようなものだ

03【コラム】「つられ笑い」は心身の健やかさの指標!?

04カウンセリングルーム<今週はお休みです>

05読むこころカフェ(37)

・何はなくとも、まずは身体を動かすことから

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

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人生の分水嶺は「瞬間」に宿る

2015年12月11日(金)06時00分11秒

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先日歌手デビューを果たした銀座「Lounge ZERO」

 

 瞬間ごとに判断している

 

想像してください。

 

あなたはいま、片道2車線の道路で車を運転しています。速度は時速50km。前方やバックミラーには他の車も見えますが、道はさほど混んでいるわけではなく、順調に流れています。

 

やがて、あなたの視界に交差点が見えてきます。右折するのであれば、少し早めに車線変更して、右レーンに入っておく必要があるでしょう。あるいは、左折するのであれば車線変更の必要はありませんが、やはり早めにアクセルを緩め、ウインカーを出して、準備をしなければいけないでしょう。

 

そのまま直進しますか? もしそうなら、準備は必要ないかもしれませんね。でもその場合も、自分の前を走る車の動きやウインカーなどに注意しておかないと、思わぬ事故を起こしてしまうかもしれません。

 

自動車の運転を安全に行うには、こうした無意識の判断を繰り返し、繰り返し行う必要があります。しかも、そこには時間的猶予はほとんどといっていいぐらい、ありません。求められるのは、ほとんど意識することさえ困難なぐらいの、瞬間的な判断です。判断を求められる瞬間は、次々にやってきます。そしてある瞬間、もしあなたが正しい判断ができなかったとすれば、その車は事故を起こしたり、思わぬ回り道をしてしまい、目的地に辿り着けなくなってしまうことになってしまうでしょう。

 

僕たちの心も、この自動車の運転と同じです。日常というのは、文字通り「瞬間ごとの判断と選択」によって紡がれています。何気ない会話の中で、相手の言葉に一瞬カチンと来る。その瞬間に、「なんでそんな言い方するの?」と聞き咎めるのか、腹は立つけれどその気持ちを押さえ込んでしまうのか、あるいは全く違う対処を見出すのか。そういったことを判断し、行動に移す。そのために与えられた時間は長くて数秒です。

 

そう。私たちは日々、瞬間ごとに、交差点を前にした自動車の運転手と同じような判断と行動を求められているのです。

 

 

人生は瞬間に支配されている

 

しかも、重要なことは、この「瞬間の判断」に、その後の人生が大きく左右されることがある、ということです。右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいはそのまま直進するかといったあなたの選択は「いま、目の前で起きている問題」だけではなく、その後長く続いていくあなたの人生全体を左右する、重要な決断かもしれないのです。

 

私たちが「瞬間の判断と行動」によって得るもの、あるいは失うものというのは、あなたの人生の「流れ」そのものといっても過言ではありません。ある瞬間に右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいは直進するか。それによって、あなたの人間的成長は大きく左右される。

 

あなたの人生の運の流れ、力の流れは、文字通り「瞬間」に支配されているのです。一見些細なやりとりにすぎない瞬間にこそ、人生を変える力が宿っている。すべてはいま、この一瞬に決まっているかもしれないのです。

 

僕が、皆さんにお伝えする心理学をできるかぎりマニュアル的なものから遠ざけようとするのは、このためです。実際問題、「目の前の相手との人間関係」をなんとかしようとするだけなら、マニュアル的な対応を学んでいくことで改善できることも少なくありません。

 

もちろん、対人関係においても「たったひとつのミスで破綻してしまう」こともあります。しかし一般的には、そこまでの厳しさが求められる対人関係というのは例外的です。私たちは互いに未熟であり、互いのミスを許しあうことによって、対人関係の絆をつむいでいるのですから。

 

しかしながら、あなたの人生全体に目を向けるのであれば、ある「瞬間」にあなたがどう行動するかということは、極めて大きな意味を持っていることが少なくありません。「覆水盆に返らず」という言葉がありますが、ある瞬間を逃すと取り返しのつかないことというのが、人生にはある。

 

誤解を恐れずにいえば、私たちが過ごす日常の「瞬間」には、人生がなぜかうまくいく人と、なぜかうまくいかない人を分ける分水嶺があるのです。

 

もしそうだとすれば。

 

私たちはどのように、そうした「人生の決定的な瞬間」に向き合っていけばいいのでしょうか? 僕が、僕の心理学の中で追求していきたいのは、まさにそのことなのです。

 

 

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年12月7日 Vol.113<人生の分水嶺は「瞬間」に宿る/natural fool な人々との素敵な出会い! 11.29銀座「LOUNGE ZERO」歌手デビュー報告/競争から誘惑へほか>目次

00【イントロダクション】人生の分水嶺は「瞬間」に宿る

01【近況】natural fool な人々との素敵な出会い! 11.29銀座「LOUNGE ZERO」歌手デビュー報告

02【コラム】競争から誘惑へ

03カウンセリングルーム<今週はお休みです>

04精神科医の備忘録 Key of Life

・批判をしても相手は決して変わらない

05講座情報・メディア出演予定

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【メルマガ】思考や論理と同じぐらいに、その人の気質を見よう

2015年11月16日(月)04時00分26秒

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「現実を直視しろ」

 

人は意外と安易に、そう言います。

 

そしてこの言葉は、多くの場面で相手の意見を封殺する、ある種の殺し文句として機能しています。しかしそもそも、個人にとっての「現実」とは何でしょうか。これはそう一筋縄にはいかないテーマではないでしょうか。

 

もしも人が同じように感じ、同じように考える生き物であるなら、「現実を直視しろ」という言葉は有効です。しかし、ある気質(身体の感受性)を持つ人にとっての現実が、別の気質を持つ人にとっては現実的ではない理想論か、下手をすると夢想としか感じ取れないことが少なくないことを、私たちは知っています。(少なくとも、このメルマガを読まれている読者の皆さんにとっては、共通認識となりつつあるでしょう)

 

そのような複数の「現実」の中で生きる私たちにとって、「現実を直視する」とはどういうことなのか? 体癖論を学ぶことは、この難問に取り組む上で、大きな手がかりとなります。

 

思想や知識を見ているだけでは、私たちは異なる意見に耳を傾けることができません。異なる意見が生じるのは、気質によってまったく異なる「現実」があるからです。思想や論理について考えるのと同じぐらい、相手の気質を見るということ。

 

もし、本当の意味で生産的な議論をしたいと思うなら、そのことは必須だと思うのです。

 

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年11月16日 Vol.112<思考や論理と同じぐらいに、その人の気質を見よう/寂しさとともにある幸せの中で、人は成長する/緊張をほぐす3つのステップ/表参道にて『キングダム』の戦禍に酔う心/身体から「倫理」と「道徳」の違いを考える/ほか>目次

00【イントロダクション】思考や論理と同じぐらいに、その人の気質を見よう

01【近況】寂しさとともにある幸せの中で、人は成長する

02【コラム】緊張をほぐす3つのステップ

03精神科医の備忘録 Key of Life

・表参道にて『キングダム』の戦禍に酔う心

04カウンセリングルーム<今週はお休みです>

05読むこころカフェ(36)

・身体から「倫理」と「道徳」の違いを考える

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

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