【メルマガ無料公開記事】なぜ私は喫茶店でしか仕事ができないのか–場の心理学から考える


このメルマガの読者の方はご存じの方も多いと思いますが、

僕は基本的に、喫茶店でしか、仕事ができません。

 

資料を読むにしても、原稿に赤を入れるにしても、あるいはインタビューや対談を収録するにしても、事務所や自宅では、どうもはかどらない。単語ぐらいは出てきても、ある程度の文脈を持った言葉になってくれないんですね。

 

 

喫茶店だと仕事がはかどるのは、たぶん、「適度なノイズ」が入るからなんだと思います。

 

ですから喫茶店といっても、どこでもいいわけじゃありません。ある程度常連さんがついているけれど、それなりに一見さんのお客さんも出入りするお店で、いついっても、同じようでいて、どこかが違う。有線のBGMや、お客さんの会話の内容、コーヒーの濃さ……。

 

そういうものが適度なノイズとして入ってきて初めて、仕事がはかどるんです。

 

 

だいぶ昔の話ですが、ある番組の企画でコメントをさせていただく時に、番組の設定のために、ほとんど何もない、真っ白なスタジオでコメントしたことがありました。もちろん仕事なので、僕なりにがんばってコメントをしましたが、正直なところ、あの時ほど、自分が何を言っていいのかわからなくなって焦ったことはなかったぐらいです。

 

これは我ながら「ああそうか。これだけ自分の思考は、周りの雰囲気に影響を受けているのだ」と、染み入るように理解できた瞬間でした。

 

 

僕は極端な例かもしれませんが、人は誰でも、「場の力」の影響を受けて、仕事をしています。僕はフリーランスですから、喫茶店が仕事場になりますが、多くの方の仕事場は、会社のオフィスでしょう。

 

そういう場合、オフィスの中に、何らかの「ノイズ」があることが、重要だと僕は思います。

 

一番簡単なのは、植物や動物などの、「自然」を招き入れることでしょうね。よく昭和なドラマで、社長室に大きな観葉植物や熱帯魚、あるいはカメなどの爬虫類を水槽にかわれているシーンをよく見かけますが、あれは、ただのわかりやすい成金趣味のアイコン、というのでもないのだと思います。

 

合理的に仕事を進めなければならない人ほど、環境の中に、ノイズとなるような非合理的な、あるいは目的意識と合致しない「何か」を招き入れる。成功する人というのは、無意識か意識的かはともかく、そういうことをやっているんだと思うんです。

 

 

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年9月18日 Vol.156
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今週の目次
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00【巻頭言】本質を見えづらくさせる「光」もある

01【近況】なぜ私は喫茶店でしか仕事ができないのか

02【心理学】漠然とした将来への不安とどう折り合いをつける?

03カウンセリングルーム※今週はお休みです

04【コラム】日本人が抱える「神経症的しんどさ」の正体

05精神科医の備忘録 Key of Life

・「いま一番大事なこと」なんて、なくていいんだよ

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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