【メルマガ】「世の中が間違っている!」と感じたら
世の中に対して「何かが間違っている」という怒りを覚えたり、自分の力でそれを「少しでも良くしたい」と考えたりする。そのこと自体は、決して間違ってはいません。しかし、「良くしたい」と思うことと、「良くなる」ことの間には、たいへんな距離があるという現実を、私たちはついつい忘れてしまいます。ここに大きな罠があります。
一度でも「自分を変えよう」という努力をしたことがある人なら、「変わる」ということがいかに大変かを知っているでしょう。しかし、そういう「変わらない」個人が集まった社会を「良くする」ということの途方も無い大変さについては、なかなか想像が及びません。わたしたちは。自分自身の心がすぐに変わらないことを棚に上げながら、ついつい、社会を「すぐに」変えようと考えるのです。
その結果、「変わらない」ことへの苛立ちや怒りが、自分以外の他者へと向かうことになります。その先に待っているのは、他者に対する非難や批判で一生を埋め尽くす人生だけです。
ですから、もしもあなたが万が一「社会を良くしたい」という思いを抱いてしまったなら、少なくとも「一万年かけて良くしよう」というぐらいの気概が必要だと私は考えます。その上で、今日一日、自分自身が集中して物事に取り組めているかということだけを問うようにする。
仮に社会が「良くなる」ということがありうるとしたら、そういう静かな取り組みをする個人が一人、また一人と現れていく、その延長線上にほのかに芽生える希望にかけるしかない。わたしはそう考えます。
人間の精神は、控えめに見ても90パーセントは現実ではなく、妄想によって支配されています。ですから、その妄想を自己から切り離す作業こそが、精神生活における最低限のノルマです。それは、自分の中に分単位で雑草のように自生して来る漠然とした不快感を、その都度、刈り取ることです。
これは、あまり多くの人が口にしないことですが、生きるための大切なノウハウでもあります。自己責任とか、自分のことは自分でやりなさい、ということを言う人は多いけれど「自分の心の始末を自分でつけよ」ということはあまり言われない。でもこのことは、どれほどの成功者であっても、人生のどん底に沈んでいる人でも同じです。自分の心を静めることは、自分にしかできない。(なんという平等性!)
「社会を良くする」道もまた、ここにしか開く可能性はありません。曲がりなりにも、自分の心を整えることに取り組んでいる人には必ず、ふとした拍子に世界がささやいてきます。
「いまだに君はこの世界の美しさに気づいていない、このままでやり過ごしていいのかい?」
と。
「世の中が間違っている!」と感じたら、自分の心に目を向ける。そのことを忘れないでください。
<この続きは名越康文メールマガジン「生きるための対話」2016年2月15日号(Vol.118)をご購読ください>
名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)
2016年2月15日 Vol.118
<「世の中が間違っている!」と感じたら/ストレスとの付き合いかた/山田洋次監督と対談!/塾通信(特別編)欠落こそが人間の可能性(1)空海が私たちに伝えたかったこと/ほか>
目次
00【イントロダクション】「世の中が間違っている!」と感じたら
01【コラム】ストレスとの付き合いかた
02精神科医の備忘録 Key of Life ・山田洋次監督と対談!
03塾通信(特別編)欠落こそが人間の可能性(1)空海が私たちに伝えたかったこと
04カウンセリングルーム
[Q]「誘惑を軸とした人生」とは?
05講座情報・メディア出演予定
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