古代史のススメ

2017年04月17日(月)09時13分52秒

心理学を学ぶときには、並行して古代史や、多神教を含めた宗教について学ぶことを、私はいつもお勧めしています。そうした人間についての包括的、歴史的な視点を踏まえておくことが、心理学のような「今、ここ」の実践にかかわる学問を学ぶ際には、ある種の「罠」に陥らないために必要なのです。

 

勉強好きで、従順な人ほど、ヒューマニスティックな仮面を被った合理主義の罠にはまりがちです。

 

日本の場合で言えば、7世紀までのいわゆる古代史を楽しむように、学んでみてください。そうじゃないと、日本人の深層心理はなかなか、捉えきれません。逆に言えば、今の私たちの人間理解や心理理解というのは、明治維新以降の、非常に限られた範囲の認識に縛られているのです。

 

まずは簡潔に、古代・中世・近代の政治・宗教・風俗と、その背景となった思想をたどってみてください。そして、ざっくりと、平安的日本、鎌倉的日本、室町的日本、江戸的日本、その上にいわば促成栽培的に乗っかった明治的日本……といった捉え方をしてみる。これは言葉にすればほんの数行でも良いのです。あ、なるほど基本が違うかも知れないんだよね、ということが自分なりに分かりさえすれば。

 

そこをつかめれば、短期的な視点に陥らずに人間理解を深めていくことができるでしょう。

 

 

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年4月16日 Vol.146
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今週の目次
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00【巻頭言】古代史のススメ
01【コラム】なぜ才能はガラスのように脆いのか やり抜く力と天賦の才の不思議な関係
02カウンセリングルーム
[Q1]転職を決めたとたん、いまの仕事に集中できなくなりました
[Q2]日本人に死生観はあるか?
03【読むこころカフェ】生命誕生以来、僕らは一度も死んでいない
04精神科医の備忘録 Key of Life
・「親切すること」自体を好きになる
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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個人としていくら成熟しても、人は集団になった途端「思春期化」する

2017年03月24日(金)11時14分36秒

長く生きて来ると、自分が世間とズレて来ているな、と感じることがあります。

 

人間は個人としては、そこそこ失敗から学ぶことができるのだけど、社会化・集団化すると滅多なことでは学びません。それは多分、社会のことは、どこか「他人事」だからですね。だから、社会は同じことを何度も繰り返す。

 

つまり、人間はどれほど成熟したとしても、集団になった瞬間に、「一億総思春期化」あるいは、若者化する、ということですね。つまり、物事を判断する基準も感覚もあいまいになり、今までのせっかくの知識の集積を冷静に活かせず、周りの感情の流れに流されてしまうんです。

 

でもね、じゃあ誰が繰り返しているの? と考えてみれば、我々国民なんですよね。

 

じゃあ、どうすればいいか。まずやるべきことは、人間集団がこれから当分の間、繰り返すだろうと思われることと、修正・改善して行ける見込みのあることを、弁別することがスタートだと僕は思うんです。

 

でも、どうも取り違えられているように感じる。その辺りが、「私は世間とズレている」というポイントなんですね。

 

今起きていることは結果であり、実は特別なことなど、少ないのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年3月20日 Vol.144
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今週の目次
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00【巻頭言】個人としていくら成熟しても、人は集団になった途端「思春期化」する

01【近況】「手探りで取り組む」ということ

02【コラム】マルチな人は身につけている!? 「飽きる力」と「切り替えの速度」

03カウンセリングルーム

・[Q]感応と同調って、どう違うんですか?

04【名越式性格分類ゼミ課題講評】観察することが感情移入の力となる

05精神科医の備忘録 Key of Life

・「悪者探し」に明け暮れる人々

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【もうすぐ締め切り!】名越式性格分類ゼミ(通信講座版)第8期募集中!

 

名越式性格分類ゼミ(通信講座版)の第8期会員受付中です。

 

今回の会期は2017年4月から。

初回のDVDには、3月5日に行われた、各体癖の鑑別診断のポイントのお話が収録されています。しばらく体癖論から離れていた人や、まだメルマガだけで、僕の講義を受けたことがない人にも、お勧めできる内容だと思います。

 

今回の募集の後は、またしばらく、追加募集はないようですので、ご関心のある方は是非いらっしゃってくださいね。(おそらく、今週中には締め切りです)

 

<<<お申し込み・詳細は下記リンク先より>>>

https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

 

 

■サービス概要(第8期会員のサービスは、2017年4月1日開始です)

・受講料 6,480円/1か月(税込)

・毎月1回、講座DVDを送付します。送付されるのは「名越式性格分類ゼミ」、あ

るいはその他講義を収録・編集したものです。

・名越式性格分類ゼミ(東京・巣鴨で開催)に会員割引で優先申し込みできます。

・その他、不定期でのイベント等予定。

 

※通信講座の概要、お支払いに関するご質問等はサイトの「よくある質問」

https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi_faq.html

もご参照いただければ幸いです。

 

<<<お申し込み・詳細は下記リンク先より>>>

https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

 
【今週のおすすめ講座】

●第44回名越式性格分類ゼミ【残席4】
2017年4月16日(日)13:30~16:00
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人生には2つの「道」がある

2017年02月20日(月)12時31分01秒

人が生きる道は、突き詰めればたった2つしかありません。それは、爽やかに生きる道と、陰うつに生きる道です。これだけが、生き方において、人間が選べる選択肢なのです。

 

爽やかに生きることに憧れを持てた人は、自室にこもっているだけでは、それができにくいことを程なく知ることになります。一時間ほど散歩する、陽当たりのよい公園で深呼吸する、景色の良い顔の人物と会う、お寺や神社に詣でる、など爽やかに過ごす工夫が必要だということを知るのです。

 

積極性とは、瞬間瞬間、アクティブに心の面倒をみることなのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年2月20日 Vol.142
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今週の目次
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00【巻頭言】人生には2つの「道」がある/【ご案内】名越康文スライドトークvol.1(2017年3月18日)受付開始!
01【コラム】「コスパ優先」で人が不幸になる理由
02カウンセリングルーム
[Q1]怒りを払うと、ストレスがたまりませんか?
[Q2]不採用通知で心が折れてしまいました
03【コラム】シャドウについて 太陽と月は、同時に空に昇らない
04精神科医の備忘録 Key of Life
・パーソナリティとは楽器の音色のようなものである
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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【今週のおすすめ講座】

●第43回名越式性格分類ゼミ【残席4】
2017年3月5日(日)13:30~16:00
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名越康文スライドトークvol.1(2017年3月18日)

2017年02月15日(水)11時11分06秒

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名越式性格分類ゼミ(通信講座版)の2周年と、名越康文メールマガジン「生きるための対話」の7周年を記念した感謝イベントを行います。

第一部は、スライドとともに、2017年を占うここだけのトークをお届けします。第二部は、豪華プレゼント付きの懇親会となります。(懇親会は別途会費が必要となります。詳細は下記をご覧ください)

名越式性格分類ゼミ通信講座会員の皆様は「優先申し込み&ご友人1名同伴可」とします。

 

詳細はこちらから

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【メルマガ巻頭言より】揺るぎない信念は感覚に宿る

2017年02月06日(月)01時52分39秒

 

人は誰でも、いつでも「変わる」ことができます。これは一見、希望に満ちた現実ではありますが、変わるということは「忘れる」ということと表裏一体です。

 

これは社会でも同じで、時代が変わるときには、前の時代にあったものは、ことごとく忘れ去られます。

 

忘れることによって、人も、時代も新しく生まれ変わります。まるで出生とともに母親の胎内で起きたことのほとんどを忘れてしまうかのように。

 

そして、生まれ変わる前に積み上げられた教訓は、その百分の一も生かされることがありません。

 

もしもそれが虚しいと思われるなら、本当に伝えたいことだけを注意深く、残すことを試みるべきでしょう。亡くなった親の本棚から、ある日偶然発見される栞がわりのメモのように、大切なものは、ひっそりと潜ませておくべきです。

 

人は「あからさまなもの」を信じないし、心に留めることはありません。なぜなら、人は本質的に、刺激の奴隷だからです。「あからさまなもの」に対して人は本当の集注をすることはないのです。

 

ただ、肝心な部分を刺激から守り、自由にしておくことは可能です。その可能性こそが感覚の世界にあります。僕はそれこそが本当の意味での「信念」というものではないかと思っています。

 

信念というのは言葉や理念に凝り固まることではなく、自分だけに感じられる未来とのやわらかなアクセスを、いつも絶やさず、保ち続ける感覚的営為なのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年2月6日 Vol.141
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今週の目次
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00【巻頭コラム】揺るぎない信念は感覚に宿る

01【近況】目指すべきは「人をその気にさせる人」になること

02【コラム】なぜあの人は「上に立とう」とするのか

03カウンセリングルーム

[Q1]自分のことを嫌っている人との付き合い方

04【読者体験報告】「名越心理学を学んで、こんないいことがありました」

05精神科医の備忘録 Key of Life

・創造(クリエイティブ)の本質は「再発見すること」にある

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【今週のおすすめ講座】

●第42回名越式性格分類ゼミ【残席4】
2017年2月19日(日)13:30~16:00
アープカレッジすがも(JR・メトロ「巣鴨駅」徒歩2分)
http://nakoshisemi.yakan-hiko.com/
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名越式性格分類ゼミ@巣鴨(月1開催のリアル講座)

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【メルマガ巻頭言より】ポスト真実の時代の感覚と多様性の心理学

2017年01月05日(木)09時41分14秒

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■ご挨拶

 

みなさん、明けましておめでとうございます。

 

発行当初から読んでいただいてる皆さんとは、ずいぶん長いおつきあい(なんと7年目!)となりました。この間、僕の追求している心理学も、(表面的には)いろいろと姿を変えてきました。ただ、その骨格となる発想は、今もそれほど大きく変わっていません。

 

今回の号に掲載される論文(僕が最近、日本学術会議に寄せた論文を、事務局の許可をいただいて少し増補・修正したもの)には、自分の心理学についてのスタンスを簡潔にまとめたつもりですが、それをお読みいただければ、僕の心理学の目指す方向性をご理解いただけるのではないかと思います。ただ、論文はどうしてもやや硬い表現になってしまっていますので、ここではそれを少し、具体的に補足するようなお話をさせていただき、2017年の巻頭言にさせていただきたいと思います。

 

■post-truthの時代

 

昨年は、いろんなことがありました。なかでも、イギリスがEUから離脱し、アメリカではトランプ大統領が誕生したことは、世界中に衝撃を与えました。このメルマガのコラムでも書きましたが、従来の知識や理論、あるいは価値観ではなかなか読み解くことが難しい時代がやってきた、ということをひしひし感じますよね。

 

今、英語圏では、時代を表現する言葉として、「ポスト真実(post-truth)」という言い方が流行しているそうです。ポスト真実というのは「真実」が通用しなくなり、「嘘」が力を持つ時代になった、ということです。

 

なかなか、おもしろい表現だと思います。この言葉は使われだした当初、「事実ではない言葉であっても、民衆の感情に訴えれば支持を得てしまう」というニュアンスだったようです。トランプさんにしてもイギリスのEU離脱にしても、そうした「事実ではない言葉によって扇動された人々が引き起こした現象」だというわけですね。

 

確かに、そういう側面はあった。しかしその一方で、僕はこのpost-truthという言葉が僕らに突きつける問いかけは「では真実とは何なのか、誰が決めるのか」ということじゃないか、というふうにも思うんです。

 

トランプさんが事実に反したことを語っていたのは確かかもしれません。しかし、だからといって、敗れたヒラリーさんや、EU離脱に反対したイギリスの知識層が語っていることこそが「真実」であったといえるのか? トランプさんに投票した人は「真実」から目をそむけていたのか? こうした問いかけは、今や無視できないものになっています。

 

そして僕は、いま現実の世界で起きているのは、「大きな真実」が力を失い、たくさんの「小さな真実」が力を持ちつつあるという現実ではないかと思うのです。

 

 

■「人間はみんな同じだ」という信念の功罪

 

私たちはアメリカ人と日本人、あるいはロシア人と韓国人が「違う」ということを知っています。男と女では考え方が違うということも知っているし、私とあなたでは見ている世界が違う、ということも知っている。

 

にも関わらず、私たちは無意識のうちに「人間はみんな同じだ」と信じています。だからこそ「民主主義は正しい」し「人権は守られなければならない」と言う。ではなぜ、私たちはそれを「すべての人が信じる」と考えるようになったのか。それは僕の考えでは、近代になってからの「世界を科学的に見る」訓練の結果なのです。

 

人間の身体は、表面には見えない内臓や骨格に至るまで、基本的に誰もが同じです。DNAレベルで大きな個人差はないという「科学的な事実」こそが、私たちが「人権」や「平等」といった理念を信じる上で、大きな力を持っています。

 

逆に言えば、「世界を科学的に見る」という訓練、もっと言えば「洗脳」を経ない限り、「人権」や「平等」といった理念の正しさは、全くと言っていいほど自明ではないし、説得力を持たないのです。「差別は間違っている」と自信を持って言い切るためには、「人間はみんな同じだ」という、「人権に先立つ基底的な信念」が必要なのですね。

 

ところが、皮肉なことに、人権や平等といった理念を信奉した瞬間、私たちはそれを信奉しない人間や、それをないがしろにする人間を蔑み、攻撃するようになります。

 

異なる考え方や思想信条を認めることや、人種や国籍で人を差別しないこと。こうした理念自体は、おそらく「正しい考え」です。しかしながら、「人間はみんな同じである」という世界観を信じた瞬間、人間はどうしても「それを信じない他者」に対して攻撃的になってしまうのです。

 

本当に皮肉な話なのですが、人間が争い合うことをやめられないのは、「人間はみんな同じ」であり、「話せばわかりあえるはず」だと信じているからなのです。

 

 

■体癖論と浪曲的正義

 

「人間はみんな同じ」という信念を持っている限り、争いは終わらない。実は、僕が体癖論に基づく性格分類をライフワークにしている理由が、ここにあります。

 

(続きはメルマガ本文をご覧ください)

 

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年1月22日 Vol.139
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今週の目次
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01【巻頭言】ポスト真実の時代の感覚と多様性の心理学

02【募集】読者体験報告募集「心理学を学んでいて、こんないいことがありました」

03カウンセリングルーム

・「意識レベルを上げる」とはどういうことですか?

04【論考】日本における心の時代の幕開け

05精神科医の備忘録 Key of Life

・いかに生きるか

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【今週のおすすめ講座】

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2017年1月22日(日)13:30~16:00
アープカレッジすがも(JR・メトロ「巣鴨駅」徒歩2分)
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【メルマガ】VRの進化と感覚的身体の変容

2016年12月19日(月)03時11分18秒

先日、「シューイチ」という番組に出させていただいた時に、KAT-TUNの中丸雄一さんがレポーターになって「東京ゲームショー」の様子がレポートされていました。中丸さんは知る人ぞ知るゲーマーなのですが、その彼がやや仕事のレベルを超えて興奮して伝えておられたのが、VR(バーチャルリアリティ)の進化でした。

おそらく、2016年の末から来年にかけて、エンターテイメントの世界を中心にVRというものが僕らの生活空間に一気に流れ込んでくるのではないか、と予想しています。ゲームに関心がない人も、将来的にはホログラムでできたAI(人工知能)とコミュニケーションを取って生活をする未来がすぐそこまできているかもしれない。ロボットとの共生よりむしろ映像人格(ホログラムやバーチャルリアリティ)との共生の方が先なのではないか、とまで思いました。そう考えると、決して他人事ではないですよね。

もちろん、そんな未来なんていらない、という人も少なくないはずです。今の生活で十分だ、進化なんかいらないよ、と。

ただ、僕の考えでは、こういう「文化的革新」というのは、必ずしも「技術革新」だけで生じるものじゃないんです。僕ら自身の潜在的な心や身体の変化。そういうものがなければ、本当の意味でムーブメントにならない。だから、文化的革新が起きるのは、そのきっかけとなる技術革新からは10年、場合によっては数十年のタイムラグが必要なんです。

先日「ポケモンGO」で一気にブレイクしたAR(拡張現実)もそうですが、技術そのものは10年かそれ以上前からかなりのレベルに達していたものが、あるタイミングで雪崩を打ったかのように世界中に広がっていく。このタイムラグを作っているものこそが「身体感覚の変化」です。

変な例えですが、一回も山登りをしたことがない人は、山を観たとしてもその大きさとか、登ることの大変さとか、登りきった時の爽快感ということをイメージできないですよね。今や僕らはVRによる体験を、「なんとなく」イメージできるようになっているように思います。こういう身体感覚の変容が、文化的変容の条件となるんです。

技術革新だけではなく、「技術革新による身体感覚の変容」がもたらされない限り、文化的革新というのは起きない。技術革新というのは、いわば「地中のマグマ」のようにエネルギーを蓄えはするけれど、それが地表に火山として噴火していくには、僕らの身体感覚の変容が必要です。今回の東京ゲームショーのレポートを観ていて、僕はVRは「そのタイミング」が来たのではないか、と感じました。

「VRって、なんとなく楽しそう」という印象を持てる程度に、VRの技術と、私たちの身体感覚が共振しつつあることを感じる中丸くんの熱気あふれるレポートでした。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年12月19日 Vol.138
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今週の目次
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01【近況】VRの進化と感覚的身体の変容/読者体験報告募集「心理学を学んでいて、こんないいことがありました」

02【カウンセリングルームPick Up!】

・人生に意味なんてあるんでしょうか?

03【コラム】何をやっても達成感を感じられないのは危険サイン?

04【論考】人はいつでも生まれ変われる

05精神科医の備忘録 Key of Life

・人生の脇道に気づく

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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2017年1月22日(日)13:30~16:00
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【メルマガ】ポピュリストはなぜ論争を好むのか

2016年12月05日(月)03時38分40秒

論争は、その人を今のレベルに固着させる、強力な接着剤となってしまうことがあります。なぜなら、人と言い争い、相手を言葉で負かそうとするうちに、「自己愛の牙城」ともいうべき砦が、心の中に一瞬にして築かれてしまうからです。

 

もちろん、生きている限り、人は論争と全く無縁ではいられないでしょう。でも、だからこそ論争を戦わせる「リングの場所」ぐらいは、注意深く選んでください。下手な場所で論争をしていると、あなたの生命力と時間は、想像するよりもずっと深く、えぐり取られてしまいます。

 

そして、ここにこそ権力者、特にポピュリストが論争を好む理由があります。彼らにとって論争とは、手段です。人を疲弊させ、洗脳する手段として、論争は非常に強力に機能します。

 

権力が論争を通じて求めているのは成果ではなく、むしろサクリファイス(生け贄)です。「逆らう者がどうなるか」を見せるつけることは、権力の維持という点において、あまりにも効率的かつ、教育的なのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年12月5日 Vol.137
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今週の目次
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00【イントロダクション】ポピュリストはなぜ論争を好むのか
01【カウンセリングルームPick Up!】瞑想していると、昔のことを思い出します
02【コラム】自意識過剰を克服したいあなたへ
03【読むこころカフェ】「ご縁を感じる力」を鍛えよう
04精神科医の備忘録 Key of Life
・強行ロードと音楽の日々
05カウンセリングルーム
・[Q]こんなことまで張り合うの!? 7種の上司について
06講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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【今週のおすすめ講座】

●第40回名越式性格分類ゼミ【残席4】
2016年12月18日(日)13:30~16:00
アープカレッジすがも(JR・メトロ「巣鴨駅」徒歩2分)
http://nakoshisemi.yakan-hiko.com/
※メルマガ購読者割引あり

名越ゼミの熱い講義を自宅でDVD受講!
「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」はこちら
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

 

<<体癖論を学ぶなら>>

名越式性格分類ゼミ@巣鴨(月1開催のリアル講座)

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【メルマガVol.136より】生返事の害と寄り道の効用

2016年11月21日(月)02時43分38秒

■自分に「生返事」をするのはやめましょう

 

生返事をするのはやめましょう。

 

生返事ばかりしていると、無意識のうちに、自分自身に対して、生返事をするようになります。そうするとやがて、自分が納得しているのかどうかさえ、わからなくなってしまいます。

 

「共感」というけれど、他人に共感する前に、自分自身が本当に心から納得したり得心したりできるかが基本です。それをやり続けることによって、日常の小さな疑問がけっこう大きなこと、普遍的なことにつながっているのが見えてくるのです。

 

 

■寄り道しよう

 

メディアの本質は、人間の無意識に作用することにあります。しかしメディアは通常、「情報」という仮面をかぶっています。テレビでもネットでも、僕らはそれがただの「情報」だと思って、つい油断してしまう。でも、メディアの上っ面に騙されて油断していると、僕らはいつの間にか、無意識を操作されてしまう。

 

人の行動の動機は無意識のレベルにあり、その人の意識には決してのぼってはきません。意識にのぼってくるのは、価値判断やリスクマネジメントであり、それらは動機というよりは「枠組み」「基準」「規制」の類です。

 

言い換えれば僕らが自分の行動の動機を言語化しているときは、ほとんどの場合、社会通念や常識に自己の内面を投影しているだけのことが非常に多い。実際、僕らが目にするインタビューのほとんどは、この範囲を出ません。本当に自分の行動の動機を語っている人は、1パーセント以下と言ったほうがいい。

 

つまり私たちの意識は、自分についての質問者に過ぎず、私の意志や行為について答えられるのは、私の中の他人(自分とは普段感じていない何者か)ということです。

 

では、無意識をメディアや通俗的な価値観や不安に支配されないために、僕たちにできることは何か。一番簡単な方法は、「出かけることを怠けない」「出かけたら、せっかくだから寄り道をする」ことなのです。

 

毎日出かけて、新鮮なものに触れましょう。そうやって、複数の感覚(聴覚、触覚、体幹感覚など)を起動させることによって、私たちは自分の無意識がメディアや他人に操作されることを、防ぐことができるのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年11月21日 Vol.136
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今週の目次
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00【イントロダクション】生返事の害と寄り道の効用

01【近況】ドナルド・トランプの逆転劇から学ぶルサンチマンの心理学

02カウンセリングルーム

[Q]人生に意味なんてあるんでしょうか?

03【読むこころカフェ】

・日本人が理解していない「フェア」の観念

04精神科医の備忘録 Key of Life

・欠落感に自分の本質がある

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【メルマガVol.135】「私」という壁との闘い方

2016年11月07日(月)02時00分40秒

自分にとって真の壁となるのは、親でも、上司でも、国でもありません。他ならぬ「私」こそが、私にとって真の壁として立ちふさがるのです。他者に何かを伝えたい。そんな素朴な思いですら、怯えた私は、壁となって立ち塞がるでしょう。

 

かといって、私を押さえこもうという試みは大抵、うまくいきません。正面から押さえ込もうとしても、「私」はますます反抗し、強固な壁として立ち塞がってくることでしょう。

 

自己否定というのは、たいていの場合、自己愛の裏返しにすぎません。「私は最低の人間だ!」と自らを罵りながらも、その実、そうやって自己否定できる自分を可愛がっているにすぎないことが多いはずなのです。

 

しかしながら、本当の意味で自分を否定する、そういう働きがあるのも事実です。それは否定といった力での反発ではなくて、どちらかというと壁ぬけをするような感覚に近いのです。自分をスルーする。それだけが、自己を解放へと掻き立てるのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年11月7日 Vol.135
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今週の目次
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00【イントロダクション】「私」という壁との闘い方

01【カウンセリングルームPick Up!】目的意識を持たないことの心理学的メリット

02【コラム】承認欲求との付き合い方

03【近況】「時間的絶望」をどう克服するか

04精神科医の備忘録 Key of Life

・見えない「条件付け」に気づく

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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2016年11月 20日(日)13:30~16:00
アープカレッジすがも(JR・メトロ「巣鴨駅」徒歩2分)
http://nakoshisemi.yakan-hiko.com/
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