【メルマガ】思想という舞台と、本当の智恵について

2015年11月03日(火)10時24分29秒

「自分が知らないことを知ろうとすること」

それこそが「学び」であるということについては、おそらくすべての人が同意されることでしょう。

しかしながら、不可解なものを知ろうとすることと、既に知っていることを再確認しようとすることを、当の本人が峻別することは、実は非常に困難です。本当に慎重に物事を進めているときをのぞいて、私たちの思考というものは、ほとんどの例外なく、自己承認に向かうのです。

だから、完成度の高い思想というのは、概ね「よくできた舞台」の様相を呈します。クリアカットで完成度の高い思想の「見事さ」というのは、(現実をよく説明しているからというよりはむしろ)その「舞台性」のうちに宿っているのです。

それはそれで、無意味なものとは言いません。しかしそれは、本当の智恵ではないのです。「智恵」というものがあくまでも現実と対人関係の渦の中で試されるものである限り、それはむしろ、智慧とは真逆の存在といっていいでしょう。

本当の智恵とは「まだ居ぬ地点から振り返ること」に宿るのであり、そのリアルさの深度こそが、智恵の深さを表すのだと思います。

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年11月2日 Vol.111<思想という舞台と、本当の智恵/特別対談:甲野善紀×名越康文第3回(最終回) 共同幻想の向こう側へ/9種体癖の執着心と体癖診断のコツ/ほか>目次

00【イントロダクション】思想という舞台と、本当の智恵について
01特別対談:甲野善紀×名越康文
第3回(最終回) 共同幻想の向こう側へ
02精神科医の備忘録 Key of Life
・旅の終わりに思うこと
03カウンセリングルーム(今週はおやすみです)
04塾通信(58)9種体癖の執着心と体癖診断のコツ
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

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<お勧め講座>

(1)名越康文ライブ☆ DIZZY NIGHT 2015
Talk & Sing♪ & Party

人間の深奥を探求しつづける精神科医名越康文が自らの内奥を凝視め、
底にひそむ光る石を拾い上げ、自らを身体に委ねるとき、言葉と歌がほとばしりでる!

日時:2015年 11月29日(日) Start:17:00(Open:16:30)
会場:GINZA lounge ZERO
DIZZY NIGHT は、3部構成のライブ・バー形式(着席/ドリンク・料理付)です。
17:00 1st Stage:講演と対談のトークライブ
・講演「(準備中)」名越康文
・対談「生きている不思議/言葉と身体」ゲスト:覚 和歌子(詩人)

18:00 2nd Stage:ブルージィなJazzライブ
Nakoshi Yasufumi LIVE2015 DIZZY NIGHT
名越康文(vo)、東京ローカル・ホンク(g,b,dr,cho)、池田みどり(p) &サプライズα

19:00 Party: 打ち上げ&ひとあし早い忘年会

申し込み・問い合わせ
http://dizzynight-ktbkbt.peatix.com

 

(2)【残席わずか 早割は11月5日まで!】 名越式性格分類ゼミ(第27回)
日時:11月22日(日)13:30~16:00
場所:アープカレッジ巣鴨(東京・JR「巣鴨」駅徒歩2分)

名越式性格分類を学ぶ少人数ゼミ。これまで、1回ごとに1つの体癖を解説してきた当ゼミですが、前回から新たなフェイズに突入! 心理学、仏教、身体論など、さまざまな角度から、性格分類の世界を多角的に掘り下げていきます。これまで、どこの講座でも踏み込んでいない、最新・最深の名越心理学講義。

詳細は「名越式性格分類ゼミ」ウェブサイトをご覧ください。
http://nakoshisemi.yakan-hiko.com/
※メルマガ購読者割引あり
※定員に達し次第締め切り

【メルマガ】時の流れを泳ぐために、私たちは意識を手に入れた

2015年10月19日(月)04時35分57秒

時間というのは、いわば水の流れのようなものです。人間は、空間の中だけではなく、時間の中に住むようになった生き物だということができるでしょう。魚が水の中で泳ぐためにヒレを獲得したように、私たちは時間の波を泳ぐために、意識を獲得したのです。ですから、意識を曇らせることは、時空の中で溺れているということだといってもいいぐらいです。

神像や仏像の目は、対象に結ばれてはいないように見えます。それは、永遠に続く時の流れの中の一コマをどう生きるかという問いを、絶えず人に想起させる慈悲深い装置なのではないでしょうか。

さぁ、今日も空気の中を意識がうまく泳げますように。

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年10月 19日 Vol.110 目次

00【イントロダクション】名越式性格分類ゼミのこれから
01【近況】読者からの感想、戦後の匂い、内向きの攻撃性について
02【コラム】継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること
03精神科医の備忘録 Key of Life
・コーヒーとカレー
04カウンセリングルーム
[Q1] 「償い」について
05特別対談:甲野善紀×名越康文
第2回 努力するいやらしさ、努力しないズルさ
06講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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名越式性格分類ゼミ10月告知動画

熱く語ってるなー名越。これシューイチ終わったあとですぐ撮ったんですけどね。

巣鴨で月1開催している、名越式性格分類ゼミ。これまでは月1回、ひとつの体癖を取り上げる、ということをやっていたんですが、10月18日のゼミからは、しばらく『体癖以前 日本人の精神性』というテーマを取り上げたいと思っています。

なぜ、日本人の精神性を考えることが、性格分類につながるのか? ということを上の動画で語っているわけですが、その「中身」については、10月以降、ゼミにお越しいただいた皆さんからの質問も交えながら、どんどん展開していく予定です。よろしければぜひ、ご参加ください。

名越式性格分類ゼミ@巣鴨
http://nakoshisemi.yakan-hiko.com/

地方にいて、ゼミに出席できない、という方には、通信講座版もあります。こちらは月に1回、DVDで講義を見ることができる、というものです。運営上、会員募集は数ヶ月に一回しかできないそうですので、ご興味のある方はぜひどうぞ!

名越式性格分類ゼミ(通信講座版)第3期会員募集中
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html/

【告知】名越式性格分類ゼミ(通信講座版)第3期会員募集開始!

2015年10月07日(水)08時18分15秒

名越式性格分類ゼミ事務局です。大変お待たせをいたしましたが、「名越式性格

分類ゼミ(通信講座版)」第3期会員募集を開始いたします。

第3期募集定員は50名とさせていただきます。お申し込み人数が上限に達した時
点で締め切らせていただきます。なお、第4期の募集人数・時期については未定
です。

<<<お申し込み・詳細は下記リンク先より>>>
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

■特典グッズをご用意!
第3期会員としてご入会いただいたみなさんには、通常のDVDに加え、名越式性格
分類ゼミ(通信講座版)の限定グッズをお送りさせていただく予定です。

■名越式性格分類ゼミ(通信講座版)の概要

「なぜこの人とはわかりあえないのだろう?」
「どうして私の言うことが伝わらないのだろう?」

対人関係はすべての人にとって永遠の課題であり、謎でもあります。
この通信講座では、名越康文心理学の根幹をなす性格分類(体癖論)によって、
人間理解を徹底的に深めていきます。

※本講座は月1回、東京・巣鴨で行われている「名越式性格分類ゼミ」の通信講座
版です。「名越式性格分類ゼミ」についてはこちらをご覧ください。
※体癖論とは、野口整体の創始者・野口晴哉氏が提唱した、体型・体質などから、
人間の感受性の違いをタイプ別に分類したもの。名越式性格分類は、野口晴哉氏
の次男・野口裕之氏(身体教育研究所所長)の体癖論をベースに、自身の臨床経
験を踏まえてまとめなおしている。

【メルマガ】想像力は人生を変えるか

2015年09月21日(月)08時48分40秒

想像力は人生を変えるか。

 

おそらく何万人もの人が繰り返し、繰り返し、このことを語ってきたことだろうと思います。しかしそもそも、想像力とはなんなのでしょうか。本当に、想像することが、自分を、世界を変えることができるのでしょうか。

 

確かに、想像力が有効に働くことによって、人の潜在能力は開花します。同じように取り組んでいたとしても、心の中が「他人からほめられたい」という承認欲求で満たされた人は、目的を達成するたびに手綱を緩めてしまうでしょう。しかし、想像力に駆動された意欲というのは目的を達成することによって、さらにエネルギーを増していきます。どれほど巨大なことを達成しても、その次の瞬間には、次のことについてワクワクし、行動を起こすことができるのです。

 

これは想像力というものが持つ、まぎれもないひとつの真実です。ただ、この逆もまた真なり、ということは忘れてはいけません。想像力がネガティブな方向に働いたときに、どれだけその人の日々の暮らしと未来とを縮小させているか。無意識のうちに、どれほど「見えない監獄」を築いているか。これもまた、途方もない現実の一側面なのです。

 

だからこそ、私たちは想像力を常に、具体的な行動と結びつけて考える必要があります。こうありたい、やってみたい。そういう前向きな想像力を、いかに今日1日の行動に結び付けるか。その作業を怠っていると、私たちの想像力は行き場を失い、やがては思わぬ方向に暴走してしまうことでしょう。

 

想像力の力を開花させようとする人は、常にそれを、高い技能と情熱的な探究と結びつけておく必要があります。思いだけでそこに技がなく、また探求の労を惜しむならば、それは我欲にしかなりません。たとえそれが、どんな清純な思いであれ、大事を達成することにはつながらないのです。

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年9月21日 Vol.108目次

00【イントロダクション】想像力は人生を変えるか

01【コラム】「才能の芽」を摘まないために必要なたったひとつのこと

02精神科医の備忘録 Key of Life

・自分で自分の人生を経営する

03カウンセリングルーム

[Q1]方位が気になって旅に出られません

04読むこころカフェ(35)

・「痛み」から見る心と身体

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

 

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【メルマガ】無意識の中にある「他者への期待」–その功罪

2015年09月08日(火)04時18分57秒

最近気づいたことなんですが、僕ら日本人の心の中にある「他者への期待」っていうのは、その90パーセント以上が無意識のうちにあるものなんです。「もっと私のことを愛してほしい」とか「もうちょっと言うことを聞いてほしい」というように、きちんと言葉にして表現したり、自覚したりしているような「期待」というのは、その人が抱えている期待のほんの一部にすぎない。ほとんどの期待は、いわば深い無意識の底に沈んでいる(ふだん全く意識化されない)。

 

だからこそ、日本人の怒りというのは、ときに苛烈なものになる。「自分が何に対して、どのように期待しているか」という自覚がないために、その期待が裏切られ、怒りに転嫁してしまったときに、まったく歯止めがかからなくなってしまう。それは「自分がなぜ怒っているのか」がわからないから。無意識の期待に、気づいていないから。

 

もちろん、無意識の期待というのは、日本人だけが持っているものじゃありません。どこの国の人だって、程度の差はあれ、持っているものです。ただ、日本人は特に、「無意識の期待」の比重が高いんじゃないかと思うんです。それは結局、諸外国に比べて日本人の子育てが密接だから。

 

幼い頃から親があれこれ世話を焼いてくれて、非常に密接な身体的接触の中での「阿吽の呼吸」によって、言葉に出さなくても相手がやってくれる。そういう母子、もしくは父子が密着した子育ての中で育ってきた僕らの「期待」というのは、そのほとんどが無意識的なものにならざるを得ない。

 

つまり、「無意識の期待」の肥大化というのは、日本人の密な子育ての「副作用」だということです。

 

誤解のないように断っておきますが、僕は、日本人の子育てを、基本的には支持しています。「親が細やかに手をかけて子供を育てる」ということは、おそらくプラスの側面のほうが大きい。少なくとも、日本人が持つ繊細さや、高度なコミュニケーション文化というのは、こうした子育て習慣の中で培われてきたものだし、それは決して失われてはならないものだと思う。

 

しかし、そこには副作用もある。そのことは忘れてはならないだろうと思うんです。

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年9月7日 Vol.107目次

00【イントロダクション】無意識の中にある「他者への期待」–その功罪

01【近況】善意のなれの果ての悪意/死に物狂いでやるということ

02【解説】観察力とは何か

03精神科医の備忘録 Key of Life

・共感せずに他者を認めることはできるか

04カウンセリングルーム

[Q1] 仏教に対して恐怖心を覚えています

05読むこころカフェ(34)

・他者がもたらす不快といかに付き合うか

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【ご案内】類人猿分類の新刊、9月11日発売決定!

 

「ガイアの夜明け」や「とくダネ!」で話題となった類人猿分類。その最新版・決定版の本を鋭意制作中です。タイトルは『類人猿分類公式マニュアル2.0  人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』。2015年9月11日発売です。まだ予約期間ですが、amazon総合でトップ200位に入るなど、大注目の一冊。

 

私は監修として関わらせていただきました。非常に良い本です。よろしければぜひ!(名越康文)

 

『類人猿分類公式マニュアル2.0  人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』

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書籍情報はこちらに掲載中です。

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※類人猿分類の既刊『ゴリラの冷や汗』も好評発売中。

 

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【メルマガ】シュプレヒコールのデジャブ感—大切なのは、深く呼吸をすること

2015年08月17日(月)03時25分08秒

「戦争したくない」というのは、少なくとも「論点」とはいえません。議論の基点です。しかしいまのところ、そこを共有できないまま、時間だけが無為に過ぎ去っていきます。そこに、シュプレヒコールのデジャブ感を覚えざるを得ない。

平和を願うことは大切です。しかしそれよりもずっと大切なことは、一人ひとりの人間が、深く呼吸をすることです。深い呼吸をすることによって、はじめて私たちは考えることができる。そうでなければ、平和を主張する者の叫びが、虚しく響くことになるだけです。

シュプレヒコールによって煽ることの弊害は、考えること、学ぶことが必要ないと直感する者を増やしてしまうことです。物事を短絡的に捉えることを推奨することは、本人の予想をはるかに超えた扇動となります。なぜなら扇動された者は、同時に排他的に生きる者となるからです。そしてその究極の排他が「戦争」である、と考えることもできるでしょう。

ではなぜ人はかくもたやすく扇動されるのか? それは、私たちの多くが常日頃から、大きな不満を抱えながら生きているからです。

不満を抱えているから、私たちは「ただ生きる」ということはできず、なんらかのアイデンティティを求めます。それがわかりやすいものであればあるほど、魅力的に映る。

そういう意味では、私たち大衆の一人一人が、そうした世界的なアイデンティティの矛盾の只中に足を踏み入れるしかないという、空前の時代が訪れているのかもしれません。私もまた、その時代を、深い呼吸とともに迎えたいと思います。

 

【ご案内】類人猿分類の新刊、9月11日発売決定!

「ガイアの夜明け」や「とくダネ!」で話題となった類人猿分類。その最新版・決定版の本を鋭意制作中です。タイトルは『類人猿分類公式マニュアル2.0  人間関係に必要な知恵はすべて類人猿に学んだ』。2015年9月11日発売です。

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年8月 17日 Vol.106目次

00【イントロダクション】シュプレヒコールのデジャブ感
01【近況】性の交差現象が起きるとき、人は癒される
02カウンセリングルーム
[Q1] 「面倒くさい」は我慢しなければいけないのか
[Q2] デモに参加するときに気をつけなければいけないこと
[Q3] ついお酒を飲みすぎてしまう
03精神科医の備忘録 Key of Life
・時間とは「壊れやすさ」のことである
04【新刊】 『自分を支える心の技法』文庫版あとがき(抜粋)
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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【メルマガ】誰も知らない「本当の時間」の力

2015年07月20日(月)01時39分41秒

何かと人の言葉にイラついて仕方がないという人でも、その言葉を朝に聞くのか、夜に聞くのかによって、腹の立ち方はずいぶん違うはずです。昼間は内容が気になり、夜は語尾が気になる。そんなふうに、時間帯によって、同じ言葉でも、心や身体にどう響くかは、変化するのです。

 

「時間」というものが私たちの感覚に与える影響の大きさは甚大です。しかし、そのことに本当の意味で気づいている人は非常に少ないのではないかと感じます。多くの人は、時間というものを時計が刻む客観的な「時間」としてしか捉えることができず、私たちの感覚が捉えている「本当の時間」に向き合おうとはしません。

 

では、時計が刻む客観的な時間と、僕たちが日々、実感として受け止めている「本当の時間」には、実際のところ、どのような違いがあるでしょうか。

 

結論からいえば、客観的な時間というのは「モノサシ」に過ぎず、実態を持たない概念にすぎません。それに対して、私たちの感覚によってありありと捉えることのできる「本当の時間」には、途方もない力が宿っているのです。

 

私たちは通常、空間における作用を“力”と呼びます。しかしそのような力はすべて、時間に押し流されていきます。時間の持つ力は絶大なのです。しかし繰り返し述べてきたように、私たちは通常、時間の持つそうした「力」に直接、触れることができずにいるのです。

 

「本当の時間」は、常に伸び縮みをしています。ある瞬間が、途方もない厚みを獲得してしまうことすらある。それを捉えるためには、「行」に取り組む必要があります。感覚を、物事(対象)に対して集注させるのではなく、瞬間に集注させる。それが行の入り口です。

 

行に取り組むことによって、私たちの感覚はようやく、「本当の時間」を捉え始めます。自分であれこれ考えているうちは、私たちは因襲的な時間の枠組みから抜け出すことができません。行に取り組むことによって、僕たちは初めて、厚みを持つ時間に遭遇します。そこにきて、はじめて僕たちは、時間が持つ本当の力を、自身の身体全体で受けとめることができるのです。

 

 

 

名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)

2015年7月20日 Vol.104
目次

00【イントロダクション】誰も知らない「本当の時間」の力

01【コラム】活力を呼び込む午前中の過ごし方

02精神科医の備忘録 Key of Life

・自己への囚われはときに生きる活力の息の根を止める

03カウンセリングルーム

[Q1]子供の才能を枯れさせない関わり方とは?

[Q2]自分に向けられた怒りをうまく受けとめることができません

04読むこころカフェ(34)

・他者がもたらす不快との付き合い方

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【メルマガ】「他人に支配されない人生」のために必要なこと

2015年07月07日(火)08時20分20秒

人はいつも、思考や価値観よりも、刺激と感覚に引きずられて生きています。

それは言い換えれば、どれほど情報を仕入れ、自分の頭で考え抜いても、「感覚」にアプローチしない人は容易に他人に誘導され、コントロールされてしまうということです。

感覚というのは「数量」や「実体」よりも有力な“現実”です。言い換えれば、私たちが触れる「実体」や「数量」というのは、常に感覚によって“汚染”されている、ということです。

我々は現実というよりむしろ、感覚に取り囲まれて日々を過ごしている。ですから、他人に支配されない人生を望むのであれば、いまあなたが知るものよりもずっと広範囲の感覚を意識し、それらを深めていくことが必要です。

しかし、ここで問題があります。それは、感覚を広げ、そして深める手段を「学ぶ」道はほとんど絶無に近いということです。感覚を深める道は、学ぶというよりは師について習うものであり、その機会に恵まれなければ、上達どころか、そのようなテーマが存在することにすら、気づくことができないのです。

 

 

名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)

2015年7月6日 Vol.103
目次

00【イントロダクション】「他人に支配されない人生」のために必要なこと
01【近況】類人猿分類(『ゴリラの冷や汗』)がブレイクした理由/「考える」とは何か02【コラム】カバンには数冊の「読めない本」を入れておこう
03カウンセリングルーム
[Q1]勝ち負けと怒りについて
[Q2]恋愛が面倒です
[Q3] やりたいことが多すぎてひとつに選べない
04精神科医の備忘録 Key of Life
・悪口を言うと運気が悪くなる
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

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【メルマガ】「疑う力」を失った現代人

2015年06月26日(金)10時35分47秒

人間の論理は、ある段階で必ず「一面的な理解」に行き着かざるを得ません。そして多くの場合、思考はそこで終結し、あとはその一面的な論理による「壁」と現実との間を絶えず循環するだけになってしまうのです。

なぜなら、脳は、不条理なものを思索し続けることが苦手だからです。僕たちの思考は、一面的な論理に絡め取られやすいし、他者からの扇動・操作を受けやすい。

言い換えれば、人は人生のどこかで必ず(本当の意味で)思考することを諦め、一面的な言説、物事を真に受けてしまうようになるということです。しかしそれは突き詰めればエゴであり、事実の実態をとらえているとはとても言えないのです。

それゆえ、理想主義者は純粋過ぎる理想を掲げているにもかかわらず、ほぼいつも、人の嫉妬や怒り、つまりルサンチマンを集める集金人のような役割を担うことになります。そして後になって、その時間が人生の浪費であったことに気づいたとしても、そこからもう一度エンジンを吹かせることは極めて難しい。なぜなら、それまでの現実と「壁」との間の無限の循環によってエネルギーを浪費し、疲労が蓄積されてしまっているからです。

その壁を乗り越え、自立した思考を続けるためには、「謎」を追い続ける構えを持つ必要があります。そこで、求められるのが「疑う」という能力なのですが、残念ながら現代では、多くの人が、「疑う」ということの本質を見失っています。

本当の意味での「疑う」というのは、「よく見る」ということです。でも、多くの人は、疑おうとして、妄想する。

では「よく見る」とはどういうことか。それは、観察しながら、そこに踏みとどまるということであり、これだけが、妄想的ではない「疑う」を支えるのです。

踏みとどまることができた人だけが、次の一歩を踏み出すことができるのです。

そして何かを超えることは、ほとんど何かを捨てるということとイコールである、ということも忘れてはいけません。それらは同時であり、どちらか一方ではいけないのです。

 

名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)

2015年6月15日 Vol.102
目次

00【イントロダクション】「疑う力」を失った現代人
01【近況】お掃除ロボットが起こした静かな革命
02【コラム】できるだけ若いうちに知っておくといい「本当の」愛の話
03精神科医の備忘録 Key of Life
・「思い」を越えよ
04カウンセリングルーム
[Q1]子育て中の妻にイラついてしまう
[Q2]体癖の偏在について
[Q3]仲間から一目置かれたい
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

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【メルマガ】依存から祈りへ

2015年06月03日(水)10時19分55秒

「論理的に正しい言葉」は、人を勢いづかせることはあっても、決して心の奥底に届く波紋にはなりえません。論理に依存した虚勢は、攻撃する対象を失えばそれでおしまいです。

依存とは、自分以外の誰かの攻撃性に乗っかることです。無意識の依存から解き放たれ、これまでの自分の数倍の力を活用すること。それだけが、未来を開くカギなのです。

まずは毎日、自分を十分に応援してください。誰かの手助けや肩入れは、その余力でやればよいのです。

自分を応援するコツはひとつだけ。心に浪費されるエネルギーを半減させること。人の心が成長しないかぎり、社会革命のほとんどは失敗する運命にありますが、自分の心の中の革命は、心と自分とを切り離すたびに、起こすことができるのです。

人間は絶えず、無意識のうちに事実誤認をし、しかもそれに対して知ったかぶりを決め込んで生きています。そのことを繰り返し認めましょう。それが分かった上で、目の前の出来事に対して、落ち着いて頭と手を動かしましょう。いかにも他の誰かが言いそうな尻軽な正しい言葉を口にしそうになったときには、一度、言葉を飲み込み、心と自分とを切り離すことに務めましょう。

それは本来の意味での「祈り」と言い換えてもいいでしょう。往々にして、私たちは過去や未来に向けて祈ろうとします。しかし、少なくとも心理学的な意味での「祈り」の王道は、「今」を祈りの集注で満たすことなのです。

別の言い方をすれば、祈りとは、自分自身をしっかりと背負いつつ、その瞬間に、自分の中身をそっくり入れ替えてしまうことなのです。

 

 

名越康文メールマガジン「生きるための対話

2015年6月1日 Vol.101
目次

00【イントロダクション】依存から祈りへ
01【近況】住民投票とドローン少年に見る前思春期性問題について
02カウンセリングルーム
[Q1]「明るい怒り」なんてあるんでしょうか?
[Q2]空気が読めてない自分を何とかしたい
03精神科医の備忘録 Key of Life
・具体的な対象から学ぶ
04読むこころカフェ(33)
・人は心の奥底では無限に成長したいと願っている
05講座情報・メディア出演予定
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