【メルマガVol.136より】生返事の害と寄り道の効用


■自分に「生返事」をするのはやめましょう

 

生返事をするのはやめましょう。

 

生返事ばかりしていると、無意識のうちに、自分自身に対して、生返事をするようになります。そうするとやがて、自分が納得しているのかどうかさえ、わからなくなってしまいます。

 

「共感」というけれど、他人に共感する前に、自分自身が本当に心から納得したり得心したりできるかが基本です。それをやり続けることによって、日常の小さな疑問がけっこう大きなこと、普遍的なことにつながっているのが見えてくるのです。

 

 

■寄り道しよう

 

メディアの本質は、人間の無意識に作用することにあります。しかしメディアは通常、「情報」という仮面をかぶっています。テレビでもネットでも、僕らはそれがただの「情報」だと思って、つい油断してしまう。でも、メディアの上っ面に騙されて油断していると、僕らはいつの間にか、無意識を操作されてしまう。

 

人の行動の動機は無意識のレベルにあり、その人の意識には決してのぼってはきません。意識にのぼってくるのは、価値判断やリスクマネジメントであり、それらは動機というよりは「枠組み」「基準」「規制」の類です。

 

言い換えれば僕らが自分の行動の動機を言語化しているときは、ほとんどの場合、社会通念や常識に自己の内面を投影しているだけのことが非常に多い。実際、僕らが目にするインタビューのほとんどは、この範囲を出ません。本当に自分の行動の動機を語っている人は、1パーセント以下と言ったほうがいい。

 

つまり私たちの意識は、自分についての質問者に過ぎず、私の意志や行為について答えられるのは、私の中の他人(自分とは普段感じていない何者か)ということです。

 

では、無意識をメディアや通俗的な価値観や不安に支配されないために、僕たちにできることは何か。一番簡単な方法は、「出かけることを怠けない」「出かけたら、せっかくだから寄り道をする」ことなのです。

 

毎日出かけて、新鮮なものに触れましょう。そうやって、複数の感覚(聴覚、触覚、体幹感覚など)を起動させることによって、私たちは自分の無意識がメディアや他人に操作されることを、防ぐことができるのです。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2016年11月21日 Vol.136
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今週の目次
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00【イントロダクション】生返事の害と寄り道の効用

01【近況】ドナルド・トランプの逆転劇から学ぶルサンチマンの心理学

02カウンセリングルーム

[Q]人生に意味なんてあるんでしょうか?

03【読むこころカフェ】

・日本人が理解していない「フェア」の観念

04精神科医の備忘録 Key of Life

・欠落感に自分の本質がある

05講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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