大学教育について


私は大学は特殊な学部(医学や薬学等)以外は、いわゆる「毒にも薬にもならない教科書」的なテキストはなるべく使わないほうがいいと思っている。一般的な意味での知識を身につけたければ、図書館でそれこそ「教科書」を借りて読めばいい。そもそも、それ程度の知への欲求もないなら、大学で教養を得ることは諦めて、肩書だけを持って卒業すればいいと思う。
そういう考えもあって、私の講義には指定図書はない。もちろん、医学書院から出した『自分を支える心の技法』や、角川から出した『瞬間の心理学』、あるいは夜間飛行の『驚く力などを読んでおくと、講義を反芻するには役立つとは思う。それがないと、もしかすると、学んだことを「身に付ける」レベルには達しないかもしれない。ただ、それにしたって学生(現在はオープン講義なので社会人が多いが)が主体的に決めればいいことで、教える側がとやかく言う話ではないと思う。
ただ、本音を言うと、ようやくまともな学的対話の下地ができかけた二回生の終わりぐらいから就職活動を開始するような今のスケジュールにおいては、本当にビリビリくるような「知的対話」が生じる機会は極めて少ない。
でも、それが学問であれ実践であれ技術の習得であれ、それが世間的に良い事であれ良くない事であれ、知的対話によって身体がビリビリと震えたその瞬間こそが、本当は人生の始まりなのにね。
こんなことでこの国はいいのかい?