日記(ブログ)


精神科医の備忘録~key of Life。臨床、講演、テレビ、ラジオ……精神科医の東奔西走の日々。

歩くことの効用/期待という心の鎖

2017年10月03日(火)11時20分18秒

歩くことの効用

何かうれしいことが起きたとしたら、その次には、多かれ少なかれさみしさがやってきます。それは少しも、残念なことではなく、素敵なことがあった「証」のようなものなのです。

 

では、そのさみしさはどう消化すればいいか。
それは、いつもより少し長めに歩くことです。

 

歩くことは、けっして軽んじてはならない、心理療法です。

 

悩みや暗い感情は、いびつな時間感覚の世界に人間を閉じ込めます。まとまった時間、散歩することは、その混乱気味の時間感覚を整え、正常化してくれるのです。

 

期待という心の鎖

 

心の傷の数だけ、人は「期待」を抱きます。ただ、そのほとんどは氷山のように、無意識の領域に沈んでいます。そういう意味で、期待こそが、その人を縛る「心の鎖」なのです。

 

もしこの鎖を寸分でも解くことができれば、おそらく心の潜在力は倍増するでしょう。

 

激しい感情を用いるたびに、人は陰で落ち込みます。それが相手を操作する為であったことを、どこかで感じているからです。

 

しかしその罪悪感を否定する為に、私たちは感情の使用を、さらに繰り返します。「これこそが、私の本当の気持ちなのだ」と信じることで、自分をはぐらかそうとするのです。

 

この「感情表出の中毒」をどこかで止めることが、自己を救うただ一つの道なのです。

 

 

歩くことも、ソロタイムのひとつの形……。
好評発売中!『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』

 

 

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年10月2日 Vol.157
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今週の目次
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01【巻頭言】歩くことの効用/期待という心の鎖

02【近況】養老先生の時間感覚から「責任」について考える

03カウンセリングルーム

[Q]すぐに現実的逃避してしまう自分を変えたい

04【講座採録】本を読んだぐらいで人生が変わるのか?

(朝日カルチャーセンター新宿出版記念講座より)

05精神科医の備忘録 Key of Life

・「見世物小屋に「再生」のマスターキーを見た

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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【メルマガ無料公開記事】なぜ私は喫茶店でしか仕事ができないのか–場の心理学から考える

2017年09月19日(火)11時14分34秒

このメルマガの読者の方はご存じの方も多いと思いますが、

僕は基本的に、喫茶店でしか、仕事ができません。

 

資料を読むにしても、原稿に赤を入れるにしても、あるいはインタビューや対談を収録するにしても、事務所や自宅では、どうもはかどらない。単語ぐらいは出てきても、ある程度の文脈を持った言葉になってくれないんですね。

 

 

喫茶店だと仕事がはかどるのは、たぶん、「適度なノイズ」が入るからなんだと思います。

 

ですから喫茶店といっても、どこでもいいわけじゃありません。ある程度常連さんがついているけれど、それなりに一見さんのお客さんも出入りするお店で、いついっても、同じようでいて、どこかが違う。有線のBGMや、お客さんの会話の内容、コーヒーの濃さ……。

 

そういうものが適度なノイズとして入ってきて初めて、仕事がはかどるんです。

 

 

だいぶ昔の話ですが、ある番組の企画でコメントをさせていただく時に、番組の設定のために、ほとんど何もない、真っ白なスタジオでコメントしたことがありました。もちろん仕事なので、僕なりにがんばってコメントをしましたが、正直なところ、あの時ほど、自分が何を言っていいのかわからなくなって焦ったことはなかったぐらいです。

 

これは我ながら「ああそうか。これだけ自分の思考は、周りの雰囲気に影響を受けているのだ」と、染み入るように理解できた瞬間でした。

 

 

僕は極端な例かもしれませんが、人は誰でも、「場の力」の影響を受けて、仕事をしています。僕はフリーランスですから、喫茶店が仕事場になりますが、多くの方の仕事場は、会社のオフィスでしょう。

 

そういう場合、オフィスの中に、何らかの「ノイズ」があることが、重要だと僕は思います。

 

一番簡単なのは、植物や動物などの、「自然」を招き入れることでしょうね。よく昭和なドラマで、社長室に大きな観葉植物や熱帯魚、あるいはカメなどの爬虫類を水槽にかわれているシーンをよく見かけますが、あれは、ただのわかりやすい成金趣味のアイコン、というのでもないのだと思います。

 

合理的に仕事を進めなければならない人ほど、環境の中に、ノイズとなるような非合理的な、あるいは目的意識と合致しない「何か」を招き入れる。成功する人というのは、無意識か意識的かはともかく、そういうことをやっているんだと思うんです。

 

 

新刊『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』でも、少し「場の力」が人に及ぼす影響について、論じています。

よろしければどうぞ!

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名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年9月18日 Vol.156
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今週の目次
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00【巻頭言】本質を見えづらくさせる「光」もある

01【近況】なぜ私は喫茶店でしか仕事ができないのか

02【心理学】漠然とした将来への不安とどう折り合いをつける?

03カウンセリングルーム※今週はお休みです

04【コラム】日本人が抱える「神経症的しんどさ」の正体

05精神科医の備忘録 Key of Life

・「いま一番大事なこと」なんて、なくていいんだよ

06講座情報・メディア出演予定

【引用・転載規定】

 

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心理学が与えてくれる翼

2017年09月04日(月)01時00分15秒

「物は考えよう」という言葉があります。

 

しかし、恋愛にしても、家族関係にしても、問題が起きていること自体は、きっと事実なのでしょう。だとすれば、それをなかったことにはできません。

 

でも、悩みごとをなくすことはできなくても、その「重さ」を変えることはできるんです。

 

 

量子力学の研究成果によって、物質の重さはそのもの自体に備わった性質というよりは、「場」との相互関係によって定まるということがわかってきているそうです。

例えば、ヒッグス粒子の影響を強く受ける陽子や中性子には質量が生じますが、光子(フォトン)は、ヒッグス粒子の影響を受けないので、質量が生じない、というようにです。

 

 

悩みの「場」にどっぷりと浸かっている時、その悩みはまるで、底なし沼のように、深く、にっちもさっちもいかない、大変なものに感じられるでしょう。

しかし、その上空を滑空する鳥にとっては、悩みの存在は感じられても、その「重さ」は、まるで存在しないかのように軽くすることができるのです。

 

 

悩みの本体は、その内容よりはむしろ、重さにこそある。

もし心理学がみなさんの力になることがあるとすれば、それはおそらく、悩みの「重さ」を、それ以前には想像もできなかったほど軽くして、その人が大きく羽ばたいていくお手伝いをすることにあるのでしょう。

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年9月4日 Vol.155
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今週の目次
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00【巻頭言】心理学が与えてくれる翼
01【近況】名越式性格分類ゼミ第2回認定試験の採点を終えて
02【心理学】「正しく疑う」ことは可能でしょうか? メディアリテラシーの心理学
03カウンセリングルーム※今週はお休みです
04【読むこころカフェ】「隠居宣言」で集注欲求を手放すことができた
05精神科医の備忘録 Key of Life
・状況を把握できていないのは当然のこと
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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新刊『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』も好評発売中。現在、3刷です!

 

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なかなか手に入らない、という方はこちらの記事をどうぞ

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矛盾に満ちた世界と人間を、いかにして愛すことができるか

2017年08月24日(木)01時46分31秒

オリジナル曲をつくりました。よかったら聴いてください。

月の下で
https://youtu.be/DVbRRWGPn0s

海辺の約束
https://youtu.be/tbO3STzqnU4

黄金の羽
https://youtu.be/4ztF20LWox8

ピアノ 池田みどり
ブルースハープ 平松悟

 

さて、今日は「正しさ」についてのお話です。

 

 

「正しさ」は一つではない。

 

そんなことは改めて言わなくても、
誰もが知ってることでしょ? と言われてしまいそうです。

 

でもね、この感覚を常に携えて日々を過ごすことができている人っていうのは、稀なんです。そういうあり方こそを、僕は知性と呼びたいと思います。

 

 

「あいつの言っていることは間違っている」
「こんな世の中はおかしい!」

 

人はいつも、もっともらしい名分を作っては、
他人を攻撃し、世界に抗おうとします。

 

必ずしもそれが、間違いだとは言いません。

 

しかしもしもその人が、自分との戦い方を知っていたら、

 

そんなふうに、他人や世界と戦おうとはしないのではないかと僕は思うんです。

 

 

 

たぶんみんな、自分との戦い方と、内側の集注の楽しみを知らないのですね。

 

 

でも、矛盾した存在として、人を好きになれるかどうか。
これが、心理学を学ぶ上での基本だと僕は考えています。

 

 

体癖を学ぶのも、相手を見透かすためではなく、矛盾を抱えた存在としての人間を理解する、その手段なのです。

 

 

<お知らせ>名越式性格分類ゼミ第10期会員受付中!

名越式性格分類ゼミ(通信講座版)の第10期会員、締め切り間近となりました。

第10期(2017年9月号)からは、これまでの体癖論講義に加えて、グループワークを含めた、カウンセリング論のコーナーが始まります。

 

長年積み上げてきた、秘伝のカウンセリング論を学ぶことができる、貴重な内容です。また、体癖講義についても、基礎に立ち返って解説する予定です。しばらくお休みされていた方も、この機会にぜひご入会ください。

 

<<<お申し込み・詳細は下記リンク先より>>>
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

 

 

■サービス概要(第10期会員のサービスは、2017年9月1日開始です)
・受講料 6,480円/1か月(税込)
・毎月1回、講座DVDを送付します。送付されるのは「名越式性格分類ゼミ」、あ
るいはその他講義を収録・編集したものです。
・名越式性格分類ゼミ(東京・巣鴨で開催)に会員割引で優先申し込みできます。
・その他、不定期でのイベント等予定。

※通信講座の概要、お支払いに関するご質問等はサイトの「よくある質問」
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi_faq.html
もご参照いただければ幸いです。

 

<<<お申し込み・詳細は下記リンク先より>>>
https://yakan-hiko.com/meeting/nakoshi.html

 

 

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新刊『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』、3刷が決まりました。
たくさんの方に読んでいただけて、うれしい限りです。

 

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もちろん、全国書店さんでも、ご購入いただけます。

なかなか手に入らない、という方はこちらの記事をどうぞ

http://nakoshiyasufumi.net/170703solotime/ ‎

 

 

 


名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2017年8月21日 Vol.154
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今週の目次
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00【巻頭言】矛盾に満ちた世界と人間を、いかにして愛すことができるか
01【名越式性格分類ゼミ課題講評】二段合格者提出課題「2種体癖の魅力」
02【心理学】エディプス・コンプレックスという天才的飛躍
03カウンセリングルーム※今週はお休みです
04精神科医の備忘録 Key of Life
・さくみの会合宿!
05講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】

 

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重版(3刷)が決まりました『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』

2017年08月13日(日)11時33分14秒

Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』、重版(3刷)が決まりました。多くの方にお読みいただき、ありがとうございます。

 

何かを一所懸命やることで、何かを決して見ないようにする毎日を、神経症と呼びます。今の日本は、このしんどさに溢れているのではないか。だからこの本を作りました。

 

本質的な問題から目をそらす生き方を、社会は誠実とみなします。

なぜなら、それは、勤勉を過剰に強いるからです。

 

反対に、本質的なものを見すえて生きようとすることは、その生き方だけで周りの者の共同幻想を乱し、不安や怒りや否定を引き起こすことがある。

 

だからこそ、人にはソロタイム=ひとりぼっちの時間が必要なのです。

 

 

バカリズムさん、漫画家の海野つなみさん、しいたけ占いのしいたけさんなどのご紹介、また、ビジネスブックマラソン、ハフィントンポストなどにご紹介いただき、多くの方に読んでいただいています!

 

新刊『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である
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